ウォーターマン
「今日で日本も最後か」
 友安警部は、アパートの戸口で、そう恵子にこぼした。
「そうね」
 恵子は中学生の正志を送り出し、友安に相(あい)槌(づち)を打った。
「高山先輩どうしてるかな」
「ええ」
 恵子は憂(うれ)いた。ウォーターマンの事件は、もう誰も口にしない。忘却(ぼうきゃく)の彼方に潰(つい)えてしまった。
「俺たちも、明日からアメリカンか」
「変ねえ」
「全くだな」
 友安は苦笑すると、出勤していった。
(恵子、さようなら)
 高山は無言の惜別(せきべつ)を済ませると、そっと友安家を辞した。
 寒風吹き荒(すさ)ぶ二月十日、日本最期の日に、高山は多摩川に入水(じゅすい)し、ひっそりと自ら命を絶ったのだった。
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