上司に恋しちゃいました
あたしは必死に鬼の王子が納得する理由を考えた。


「美月(みづき)……?」


ドクンと胸が高鳴った。こんな時に下の名前で呼ぶなんて!


あたしは頭が真っ白になって、簡単な嘘さえ思いつかない。


「俺の……せいなのか?」


首を斜めに傾げ、悲しそうな瞳であたしを見る。


あたしの手が震えている。さっきから見つめていたコーヒーの表面が歪んで見えた。


もう言葉も発せられない。


きっと、声も震えているだろうから。


「……どうしても辞めるって言うんなら、一つだけ条件がある」


……条件?


あたしは瞼をそっと上げた。
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