上司に恋しちゃいました
「課長」


呼ぶと、鬼の王子はゆっくりと振り返った。


……あ、もう怒ってない。


表情と雰囲気だけで分かる。


ほっとして、あたしは鬼の王子をぎゅっと抱きしめた。


すると、鬼の王子は黙ってあたしの頭を優しく撫でてくれた。


不器用な手付きが心地いい。


「お父さんとお母さんに伝えました」


数秒程の沈黙ののち、煙草の煙が夜空に上がるのと同じタイミングで「何て言ってた?」と鬼の王子が言った。


あたしは鬼の王子の胸の中に顔を埋めて言った。


「幸せに、なれよって」


言葉に出した瞬間、泣きそうになった。唇が震えていた。


いい両親じゃん、と鬼の王子が呟くように微笑んだ。
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