上司に恋しちゃいました
早々にチェックインを済ませ、あたしの元に歩いてくる鬼の王子。



鬼の王子はあたしの腰に手を回して、エスコートするようにエレベーターに乗った。



密閉された空間が、会話を遮断する。



あたしは必死に背筋を伸ばして平気なふりをした。



本当は……震えていた。



これから起こる出来事に恐怖すら感じていた。



盛り上がっている時は何もかも忘れてしまうくらい積極的になれたのに、いざ冷静になってしまうと恐くて堪らなくなる。



隣の端正な顔立ちをした男はあたしの恋人ではない。



既婚者で、なおかつあたしの上司だ。



禁忌に震えるあたしを彼はどのように抱きしめるのだろうか。

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