私がヒールをぬいだ時
ある程度整理が終わって、私は丸美の店に顔を出した


『姉ちゃん、おかえりなさい!』と丸美は元気に言った


私はカウンターにすわると丸美の旦那に生ビールを頼んだ


『しかしまあ姉ちゃんも思い切ったな…東京からこんな田舎に帰ってくるなんて笑うわ』


『こっちのほうが仕事はかどると思ったから!てか…マツどこで拾ってん』


『堤防のとこに箱に入っててな、弱っとってん。すぐ動物病院連れていって、処置してもらったってわけや』


『で、散歩だけ連れていってると…』


『そう。朝と仕事前にな。可愛いやろ?もうみんなめろめろなんよ』


私は焼きたての焼鳥を食べながら、丸美の話しを聞いた


『でもお姉さん、かわらへんね。35にはみえへんわ』と旦那の邦彦さんこと、くにっちが言った


『くにっちも、うまなったな…商売上手やわ』


『お姉さんの同級生さん、ようきてくれますよ。もう常連さんですわ』


『そうなんや、今度きたら私も誘ってって言うといて』


『ほんま、うちの店は私らの友達関係と、姉ちゃんの友達関係で持ってるようなもんや。これはこれでありがたいんやけど』


そう言ってもらえると嬉しかった


高校生の時、漫画が認められてプロになり、二十歳で東京に行った私。仕事、仕事でなかなか帰れず、帰ったのは妹の結婚式と、親戚の葬式くらい


そんな私の事怒らずに、この田舎に迎えてくれてありがたい


でもなんで帰ってきたのか聞いたら…非難ごうごうだろうな
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