【短編集】フルーツ★バスケット

「嫌だよ。ミズキと離れるなんて」

「ボクだって辛いよ。でも、決まった事なんだ。……ボク達子供にはどうする事も出来ないんだよ」

 分かっているけど、瞳の奥から溢れ出す熱い滴は止まることを知らない。


「ほら、笑って。記念写真撮ろう」

 そういったミズキの頬とあたしの頬がピッタリくっついた瞬間に


  カシャッ

 目の前で、携帯電話のカメラのシャッターが音を起てた。


「これ、お守りに持っていて」

 そう言って、今撮った写メを赤外線通信してくれた。


「大事にするよ」

 ミズキと最後の、サクランボ。

 親なんて勝手だよ。

 好きで一緒になった筈なのに、あたし達の事も考えないでサヨナラするだなんて。

 考えたことも無かった。

 ミズキと違う時間を過ごす日がくるなんて。


「大丈夫だよ。ボク達は同じ運命だから、また会えるよ」

「本当に?」

「あぁ。約束する。必ずサクラに会いにくるから」

 ミズキは、あたしの頬を伝う幾つもの涙を拭いながら優しく頭を“良い子良い子”してくれた。

 ミズキ、ずっと待っているからね。

 ミズキが去り、残されたのは優しく香る、甘くて元気が出てくるようなミズキの香りだけ。

 この空間に漂う香りを脳の中に、身体の中にいっぱい、いっぱい、吸い込んだ。


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