【短編集】フルーツ★バスケット

「んなもん、呑み込んだって緊張は溶けねぇよ」

 分かってないなぁ。
 乙女には、オマジナイって効果的なんだからね!!

 いつもなら、言い返せるのに、今日はそんな言葉すら出てこない。

「あれ、呑み込まねぇの?」

 だって、廉くんが意味ないとか言ったくせに。


「なら、頂き」

 そう言ったかと思ったら、あたしの掌は廉くんの口にまで持っていかれた。


「よし!!
 結花の緊張は、俺が呑み込んだから」

 いつも、あたしを『アンタ』とか『オマエ』とか言ってる廉くんが、

 今、『ユウカ』って呼んだ?

 しかも、あたしのオマジナイ食べちゃったよね。

 よ・余計に緊張するじゃないのよ!!


「大丈夫だよ
 いつも通りにやればいいさ」

「そうそう。
 今更、力んだところでどうする?」

「客のために唄うんじゃない。
 俺らは、俺らの為に」

「楽しくをモットーだからな」

 そうだね。

 いつも通り、楽しめば、それが一番なんだよね。

 ありがとう。

 あたし、頑張らないよ。

 皆がいるから、みんなで一つだから。

 だから。

 今日は、おもいっきり楽しむよ

 人生で、今この時は、もうやって来ないものね。



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