同じ空の下で

「判らないんですね?」
ペンギンが、僕の心を読んだかのように言った。僕は下唇を噛んだ。妻は頭を抱え込んだ。
愛してるってなんだ? 言葉では理解していても、実際にどんな感情、どんな気持ちなのかは判らない。判らない。判らない。
「ちょっと待って」
妻が頭を抱えたまま、目を閉じ言った。「愛って何?」
僕たちは同じ疑問を抱えていた。そして恐ろしい結論が引き出されようとしていた。
「もしかして…」
ペンギンは悲しげに頷いた。
「はい、あなたたちは愛という記憶さえ失ってしまったのです」
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