二藍蝶
鏡の前で髪を梳かし
いつもよりも、赤い
リップで唇を彩る。

『待ってる』

貴方の声が
私を錯乱させる。

『お前が来るまで
 ずっと・・・』

貴方の声は
呪文を唱え、私の心を
捕らえる。

貴方は、あの場所で
私を待っている。

私は、戸締りも
着替えの入った荷物も
忘れて、バックだけを
持ち、家を出る。

貴方は、私を待っている。

あの場所で、必ず。

早く・・・

早く・・・

自転車の鍵をバックの中
探す私、見つからない。
< 147 / 918 >

この作品をシェア

pagetop