二藍蝶
肩に斜め掛けにされた
小さな鞄。

その中で、携帯電話の
着信音が鳴り響いている。

バイクの音とヘルメットで
私には何も聞こえない。

何も・・・

繋がらない携帯電話を手に
困った表情を浮かべる秘色。

ボサボサの髪を掻き揚げて
ため息をつく。

「ダメだわ、繋がらない
 あの子ったら
 いつ出かけたのかしら?
 
 友達・・・
 いったい、誰といるの?」

芳野の手には、藍の置手紙。

『ママ、芳野のパパ
 友達に会って来ます
 
 どうぞ
 心配しないで下さい』

芳野のパパ・・・
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