二藍蝶
この二十日間、浬は
眠り続けている。

それは、まるで父親の
亡き妹と同じように・・・

このまま、眠りから
覚めなければ、植物状態。

病室へ、釈放された
塁が初めて会いに来た。

病室には、母・菫の姿。

塁は、浬の頬に指先で触れる

「カイリ、帰ったぞ」

「・・・・・・」

閉じたままの、瞳

動かない、唇

「カイリ、なあ
 何か言ってくれよ

 ・・・
 つまんねえ・・・」

溢れる涙を、塁は右腕で
拭う。

「岸邊さん
 今日は、どうもありがとう
 戻ったばかりなんでしょう?
 
 今日は帰って、ゆっくり
 休んだ方がいいわ」

「はい、また
 来てもいいですか?」

「ええ、カイリも喜ぶわ」
< 837 / 918 >

この作品をシェア

pagetop