月の影

細い目

駅を降りて学校への道


あたしはあなたに近づかない


他の生徒と同じと思ってほしくないから、少しでも特別だと思ってほしいから



教室に入り

1番に田村恭子が声をかけてきた


「おはよう、美穂」


「おはよう、恭子」


恭子はあたしの唯一の友達である

このクラスの喧騒は不快なものだ
グループを作り、仲間外れを作ったりする‥そんな幼稚な高校生活をおくるのは考えただけでも嫌気がさす


恭子はサバザバとしていて、誰とでも分け隔てなく接することのできるいい子だ


あたしは明るくていつも前向きな、そんな恭子が好きだった




授業が始まり

窓際のあたしの席は陽射しが目に痛い


少しだけ細めると、窓の外に先生がみえた


向かいの校舎にある教務室でなにか書類を書いている



先生が窓のほうを向く


目が合わないかな‥


淡い期待が胸に疼く



先生はもっと高くを見つめている、そしてそっと目を細めた



同じ時間を過ごすことは、あたしにとって柔らかい時間の波に押し流されるように幸せだ




そんなことを考えているうちに先生の姿は窓から見えなくなってしまった


そうして、かったるい国語の授業も終わる



隙をみて恭子が声をかける


「次、数学だね」
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