揺らぐ幻影



面白みのない片思いが始まってしまっていた。


お正月に食べ過ぎたからダイエットしなきゃと毎年決意をしがちなまだまだ寒い季節、

会えない冬休みに好きだと気付いたところで、悲しいけれど何も進展しやしないのが一般人の恋事情だ。


学校がないと大して仲良くない人たちとは顔を合わす機会がないが、見られないからこそ、

頭の中で淡く笑った近藤洋平や、真面目な顔をした近藤洋平、

はたまた見たことのない私服姿の近藤洋平を想像させていた。

それはそれは暇な冬休みには結構貴重な時間の有効活用となっていた。


なんだかちょっと微笑ましい痛さがある田上結衣は、

四月になれば先輩と呼ばれるようになる、まだ中学生気分が抜けない高校一年生の最中だ。



とりあえず自己紹介がてら個人情報を流出させると、

結衣の通うマドカ高校は、四大を目指す頭の良い進学コースが保護者には売りらしいけれど、

ミーハーな子供ビジョンでは面白エピソードを語れない取り柄がテストの点数しかない秀才なんぞに憧れはなく、

服飾コースという響きからしてオシャレモードたっぷりな被服系のクラスが県下で最も女子から人気のある学校だったりする。


なんて具合に主人公の設定をうだうだ長く説明すると飽きるため割愛するとして、

平均よりやや下の頭の結衣は普通コースで、近藤洋平は服飾コースなので、

来年度クラス替えがあろうが、専攻が異なる二人が同じクラスになる未来は永遠にない。


――つまり、このまま過ごせばラブハプニング的な接点が生まれない。


近藤洋平からすれば、結衣はただ見たことのある隣りのクラスの女子の認知度なのだろう。

好きも嫌いもない無な存在なのだろう。



  抜け出したい……

  誰かなんとかしてよ

いつの日からか、他人任せにそう願うようになっていた。



そんな感じのピュアでシュールな女子高生恋愛サクセスストーリーは、

妄想も飽きがちで、波瀾万丈とはいかないが、何も展開がなさすぎて逆にどうなることやら不明で先行き不安な毎日だ。


プロローグを終えようが掴みはナシ、それこそが三流結衣ちゃんのリアルだと思われる。

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