揺らぐ幻影
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マリンの香りがするヘアジェルのように綺麗な色をした空は清潔だ。


月曜が待ち遠しい理由は、体育があるからだ。

ホワイトデーまで後十二日の今日は三月二日、

豚とゴリラがあだ名だなんてアリかナシかを討論した学生にありがちな先日のメール、

アルバイトが終わってからのやりとりを思い出せば、今もにやけるので、

いつもの月曜日よりも結衣はもっと幸せいっぱいだった。


恋を通して、人は見た目と違うと学べたかもしれない。

そう、ハイセンスな容姿から、ほとんどの人は近藤は冗談を言わないと先入観を持っていることだろう。

メールを確認する度に愛美と里緒菜は意外だと口を揃えるし、

結衣も仲良くなる前は、もっと神経質でつまらない人だと決め付けていたのに、

それがびっくりするほどユニークで、爆笑の息もぴったりで、

そんな彼の一面を自分だけが知っていたいと欲張りになるのが恋心だと学習もした。



体操服に着替え終わった生徒が現れ、入口が開く都度吹き込む外気と前の授業の熱気が渦巻き、体育館は青春臭い。

ポールを立ててネットを張り試合の準備を整えて、もうすぐチャイムが鳴るとストレッチが始まる。

結衣の前に元バレー部の子が補助してくれる計画で、

なんとか試合をやり過ごすことが可能となりほっとした。



「、ぽこりん」

待ち望んだ合同授業、ホイッスルが鳴り終わったが、近藤は壁際にもたれている。

好きな人がバレーを頑張る姿が見たかったのに、制服姿なので本日はサボる前提だったらしい。


  ……。

会話に夢中になっているのか、目が合う予兆はない。

今までにない感情が、感覚が、分からない。

喉の内側が乾燥して鎖骨の辺りがカンナで削られるレベルで痛み、原因不明な初めての想いに息が詰まりそうだ。


片方に寄せているオレンジがかった巻き髪、

目を閉じてもしっかりとメイクをした美形な顔立ち、結衣よりもめり張りの良いスタイル、

セーターの代わりにパーカー、紺ソではなくスポーツニーソ、

今は体育館シューズだが確かローファーは履かずオシャレスニーカー愛用のはず、

制服アレンジに基づき手短に言うなら、クラブが似合う子に思考を奪われた。

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