一なる騎士
「エイク殿ですが、変わった人ですよ、ほんとに。何を考えているのか、今ひとつ捕らえさせない。頭が良過ぎて、余人にはついていけないだけかもしれませんが」

「エルウェルは中退だと聞いているが」

「違います。彼はちゃんと卒業しています。通常六年の課程をたった三年で。当時はエルウェルはじまって以来の天才と騒がれたくらいですよ」

 クレイドルの答えにリュイスは目を瞠る。まったく思いもかけないことだった。

「では、なぜ中退などと」

「父親に自分の才能を隠しておきたいみたいですよ。昔から彼は父親をまったく信用していなかった。いえ、敵視していたそうですから」

「自分の父親をか?」

「父親に敵愾心を燃やすというのは、その年代の男の子にはありがちでしょうけど、彼の場合はちょっと度を過ぎていると僕も思います。何か理由があるのかもしれませんが、なにしろあの調子ですから」

「はぐらかされるということか」

「ええ、まったくわけのわからない人です。どこからどこまでが本心なのかつかませない癖に、妙に憎めない。まったく質が悪い」

「そうだな」

 リュイスも軽く頷く。あれだけのことを言われたというのに、彼自身に対しては嫌悪を感じなかった。油断のならない相手だとわかっていても、むしろ奇妙な親しみすら覚えるのはどういうわけだろうか。

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