一なる騎士
「エイク殿のことか?」

 予想外のリュイスの言葉に、彼はがっくりと肩を落とした。

「まったく、ここでどうして彼なんですか。こんなに鈍くては、サーナ殿もかわいそうですね」

 サーナの名を聞いたとたん、リュイスは頬に血を昇らせた。

「別に、私は……」

「けな気で一生懸命で、かわいい人ですよね、彼女は。家事全般も得意みたいだし。僕がもらってしまおうかな」

「そっ、それは困るっ!」

 本気で狼狽しながらも即座に拒否するリュイスに、クレイドルは軽い笑い声を立てる。

「ほんとに、わかりやすい人ですね、あなたは」

「からかうなっ!」

 ようやくからかわれたのだと気づいてのリュイスの抗議。しかし、頬を朱に染めたままでは迫力はない。

 ひとしきり笑った後、クレイドルはようやくサーナの安否を告げた。

「元気ですよ。あいからず一生懸命に姫君の世話をしています。あれでは他の男など目をやるどころの話ではないでしょう。安心しましたか」

「クレイドル」

 地を這うような低い声。

 いい加減にしろといいたげなリュイスに、精霊使いの長はやわらかなけれど、どこか悲しげな眼差しを投げかけた。それは優しかった先代の精霊使いの長を、リュイスに思い起こさせた。時折、彼女もそんな瞳で彼を見ていたものだった。

「では、まじめな話をしましょうか」

 ひとつため息を落として、クレイドルはそう言った。

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