一なる騎士

(2)変貌の予兆

 朝食の席に現れたリュイスは、何かを吹っ切ったような迷いのない目をしていた。
 思いつめ、ひどく焦燥していたように見えた前夜とは雲泥の差だった。気負うこともなく、ずいぶん落ち着いてるように見える。

 それは、喜ばしい変化だと言っていいはずだった。
 彼はぎりぎりまで張りつめた糸のようだと、クレイドルは常々思っていた。

 どこかでゆるめてあげないと、ぷつりと轢き千切れてしまうような。

 だから、できるだけ自分がその役を果たしていたつもりだった。
 なのに、素直に喜べない。何かが違うのだ。

 どこかどうとははっきりとはいえない。

 単なる違和感を越えた、どうにも不穏なものを感じていた。

(昨晩か)

 夜半過ぎになって、リュイスが戻ってきたときには、クレイドルは朦朧状態に陥っていた。無理をしすぎてしまったのだ。

 旅の疲れのうえに、精霊の視力を酷使したのが祟った。

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