甘い秘密指令〜愛と陰謀に翻弄された純情OL〜
車はアバートの前に停まった。

私は深呼吸をし、勇気を振り絞って征一さんに言った。

「着替えを取って来ますので待っててください。今夜は、征一さんのお宅に、お泊りさせてください!」

「え? なに、お…?」

征一さんは軽くパニックになってるけど拒絶はしてない。
それを確認して心でガッツポーズをし、勢いよく助手席のドアを開けた。

「ちょっと待て。彼氏はいいのか?」

車を出て、ドアを閉めようとしたらそれを言われた。

「匠は…弟だから!」

そう言ってドアを閉め、階段に向かって走った。

実は今のは計算通り。
いわゆる『言い逃げ』?

征一さんのリアクションを見ずに済むから。怒る瞬間を見ずに済むから。

卑怯だったかな?


家に入ると珍しく匠がいた。

「姉貴、おかえ… って、おい!」

入るなり、駆け足で通り過ぎる私に、匠は目を丸くした。

「ただいま! ごめん、お姉ちゃん急いでるから」

急いで旅行用のバッグに着替えを詰める。下着もしっかりと。
前のお泊りを思い出し、思わず頬が緩む。

「匠、今夜はお泊りして来る」

「お泊りって、まさか姉貴、ヤク○さんの女になったのかよ?」

「そんなんじゃないよ。今度説明するから、じゃあね」

おっと、靴を忘れるところだった。

玄関を出ると、征一さんの車が見えてほっとした。
怒って帰っちゃう可能性もあったから。
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