ボーダー
「ナナ?」

普段はしっかりしているナナ。

そのナナが、ボーッとしていた。
しかも、今まで停電だったから分からなかったが、頬に涙の跡がある。

「ナナ。
……隠してないで言いな?
私にだけは相談してくれてたけど。
矢榛くんがいるかいないかなんて関係ないよ。
どっちにしても事実は変わらないんだからさ。」

さすがは由紀。

するどいなあ。

「私……フラれた。
ずっと好きだったバスケ部の先輩に。
停電の騒ぎにまぎれてさっき告白して来たんだけどね。
バスケ部の役を演劇部でやることになったときに、相談したらいろいろ指導してくれたの。
3ポイントシュートのコツとか。
それがきっかけ。
単純だよね。
気付いたら……先輩のこと好きになってた。
私、好きになれるのは信ちゃんだけだと思ってたから、混乱して。」


「そっか……ナナ……。
ツラかったね……」

「理屈は分かるよ。
ウチらもよくあるけど、席替えで近くの席とか隣の席になった人に恋する、っているのは理にかなってるから。
心理学用語で近接効果、っていうんだけどね?

遠いより、近い距離にいたほうが好意を抱きやすい。
3ヶ月に1度しか会わない人より、毎日顔を合わせる人を好きになりやすいのよ。
単純に、接触する回数が増えるからなんだけどね。」

由紀の心理学講座は為になった。
うわわ、幼なじみなんてまさにその典型だ。

毎日顔を合わせまくっている。
最近、気が付けばミツのことばっかり目で追ってるの、そのため?

近接効果、とスタンツを決めるための紙の端に書き留めた。

「ごめんね皆、トランプ楽しんでるのに。
ちょっと一人にさせて?」

「わかった。
気をつけてね?」


私の声を背中に受けて、ナナはキャビンを出ていってしまった。
ナナのためにも、早く明日のキャンプファイヤーのスタンツ決めなきゃ!
< 34 / 360 >

この作品をシェア

pagetop