ボーダー

理由

〈レンside〉

学校行事のインキャンから約2ヶ月。

街には、色とりどりのイルミネーションが光輝く時期になっていた。

でも、オレはそれどころじゃなかった。

それは、2ヶ月前のことだ。

……インキャンのホテルを出た矢先に、オレの携帯にかかってきた電話。

なぜか晋藤さんからで。

1時間ほど前、成田空港行きのバスにメイが乗るのを見たらしい。

メイっていうのは、別にオレの彼女ではないよ?

今はまだ……ね?

アメリカで知り合って、家も何かと近くて、色々助けてもらってた女の子。
自由の国アメリカで、13歳で検事になった。

忙しい合間に、家に遊びに行かせて貰ったり、一緒に映画を観たり。
楽しい時間を過ごせた。

今は、アメリカ流のデーティング期間。
いろいろなところに2人で遊びに行ったり、ときには身体を重ねて夜の生活の相性を見たりもする。
それもOKなのだ。
お互いに、その期間だという認識はもちろんある。

しかし、その期間は、オレの中では終わりを告げている。
理由は簡単、もう1人の女、ハナはもうミツの女だからだ。

メイに本命だと言わなければならない。
本命だと分からせるには、将来の話をしたり、ガールフレンドだと言ったり、親に紹介するなどの方法がある。

メイ、日本に来てたのか……
それならそうと、言ってくれれば会いに行ったのに。
それに、寂しがり屋なメイのことだから、日本に来て用事を終えたら、すぐオレに会いに来るとばかり思ってた。

だったらこっちから……メイに会いに行ってやる。

「晋藤さん……すぐ、ヘリ出せますか?
……悪い、皆。
先……帰ってて?」

麻紀ちゃんや友佳ちゃんにそう言い残した。
そして、電話を片手に、ホテルの入り口まで走った。
このホテル……確かヘリポート、あったよな。

オレが着いた頃には、すでにヘリがあって。
さすがは晋藤さんだ。
神だと崇めたい。
そのままなるべく急いで、空港に向かった。

簡易ヘリポートで降りて、晋藤さんにありがとうございましたとだけ告げた。
息を切らしながらも、空港内を走る。

「はぁっ……はぁっ……」

メイのやつ、どこにいんだよ……

晋藤さんに頼んで出国記録、調べてもらったけど、まだ出てないっていうし……

諦めて目の前の景色を見る。

…………いた。

搭乗ゲート前のベンチに、独りで寂しそうに腰掛けている。

ライトグレーだけど、光が当たる場所ではソーダ味のアイスみたいな水色に見えるショートの髪の毛。
耳から下がるしずく型の水色のピアス。

法廷のときはいつも着てる、黒のミニワンピース。

やっぱりメイだ。

いつも季節を問わずナマ脚で、俺としてはその細い脚に欲情させられるから嬉しい。
それなのに今日だけはタイツだった。
生地が薄いだけが救いか。
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