ワンダー、フルカラー

******

根津さんのお父さんからおじいさんとおばあさんの話を聞かされた時、何の冗談だろうかと思った。
だから学校でもそんなには気にしてはいなかったし、心配もしていない。普通に授業を受けて日直の仕事をし、そして寄り道をしながらいつものように家に帰宅をした。
回覧板が根津さんの家にあると聞かされて、おじさんには朝に『うちの娘と夕飯を食べてくれ、1人だし』と言われたこともあったから、普段着に着替えてから家を出て根津さんの家に行こうとした。
そうしたら、根津さんのお父さんが家にやって来て、真剣な顔で僕に言ったのだ。

『おじいさんとおばあさんのボケが始まってしまった』と。改めて。

冗談ですよね?確かに2人共家にいませんでしたが、それは2人で仲良く買い物にでも出掛けたのではないのですか?
尋ねてみたら首を横に振られて、

『いくらおじさんが普段ふざけているからって冗談だと思い込むことは良くないぞ。2人は病院で検査を受けていて、現在入院中だ。』

そんなことを言われて。頭が真っ白になった。
あの2人は結構歳がいっているから呆けがいつ始まってもおかしくはない。しかし、そんな気配を朝は全く感じられなかった。
そうして考えているうちに思い当たってしまったのだ。呆けが始まってしまったと思われる原因が。

(僕のせいだ…)

血が繋がってはいるものの、僕はただお世話になっているだけの身分だ。両親の代わりに僕のことを育ててくれたのはあの老夫婦で、僕は迷惑を掛けまいと良い子のフリをしていた。
完璧だと思っていた。それなのに僕は…今日に限ってミスをしてしまったのだ。心配掛けまいといつも出掛ける前にしていた挨拶を忘れてしまうだなんて。彼らが1番恐れるようなことをしてしまったなんて…
しかもイライラしすぎたせいで根津さんに八つ当たりをしてしまった。落ち込みながら彼女の家に入ったけれど、彼女に心配掛けまいと今となってはくだらない雑誌の懸賞に名前が載っていなかったことに対しての気の沈みとして言って、落ち込み続けた。
しかし彼女の言葉で火が点いて。抑えきれなくなってしまった。
彼女のくれた慰めの言葉が、僕にはお気楽な言葉にしか聞こえないのだ。
< 26 / 89 >

この作品をシェア

pagetop