こころ、ふわり
芦屋先生はひとつの机の上に数え切れないくらい並べられた画集から1冊手に取り、それを私たち生徒に見えるように掲げてくれた。
「この画集の中から、好きな絵を1枚選んでください。なんでもいいよ。みんな1冊ずつ手元に持っていって見てみて」
先生に言われた通りにみんなで先生の机に集まり、それぞれ適当に1冊ずつ画集を持って席に戻った。
「好きな絵かぁ」
菊ちゃんが真剣に選ぶ中、私もパラパラと画集を眺めて絵を選ぶ。
そしてふと、目に留まった絵があった。
女の人が傘をさしている絵。
説明文を読んでみると、クロード・モネという人が描いた絵で、「散歩、日傘をさす女」というタイトルだった。
「私、これにする」
同じタイミングで菊ちゃんが指をさしていたのは、私も見たことがある絵だった。
フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」。
「あ、それも綺麗な絵だね」
私は菊ちゃんの選んだ絵をのぞいて微笑んだ。