こころ、ふわり
狭い廊下を抜けてリビングへ案内された。
先生の部屋はすごく綺麗というわけではないけれどそれなりに片づいていた。
リビングから見える場所に対面式のダイニングキッチンがあったりして、なかなか機能性も良さそうだった。
大きなソファとテーブル。
そしてテレビが置いてあるシンプルなリビング。
開けっ放しの隣の部屋は電気がついていないけれど寝室なのかベッドが置いてあって、ハンガーに洗濯物がたくさんかかっていた。
キョロキョロしていると、先生は
「適当に座ってて」
と寝室の方へ行き、クローゼットを開けたりしていた。
ソファに腰を下ろしてふと考える。
本当にここに来てよかったのかな、と。
生徒を家に上げるなんて本来ならありえないことだし、先生だって想定外だったはず。
先生には気になっている人もいるというのに……。
何も置かれていないガラス張りのテーブルを見下ろしてボーッとしていたら、芦屋先生が目の前に何かを差し出してきた。
黒いロンTとスウェットパンツ。
要するにルームウェアだった。
「着替えた方がいい。風邪引くよ」
「あ、はい……」
私は先生から服を受け取った。
芦屋先生が暗かった寝室の電気をつけ、私を手招きする。
「こっちで着替えてね」
言われた通りに寝室へ行くと、先生は開けっ放しにしていた引き戸の扉を閉めて、私を一人にしてくれた。