こころ、ふわり
結局、芦屋先生は私たちが食器を片づけたり、3人ともお風呂に入ってもまだ眠り続けていて、そろそろ寝ようかという頃になってようやく目覚めた。
「あれっ?いま何時?」
びっくりしたように飛び起きて時計を探す芦屋先生が面白くて、澪が冷静に「もう夜中の11時ですよ」と答えるのを聞いて、目を丸くしていた。
「ご、ごめん!吉澤さんは?」
先生の慌てようは今まで見たことが無いほどで、目の前にいる私に気づいていないのか探している。
「先生、落ち着いてください。今日はここに泊らせてもらうことになりましたから」
「えっ!そうなの?」
呆然とする芦屋先生を差し置いて、徳山先生は綺麗なバスタオルを渡しながら
「勝手にお風呂入っていいから。俺たちはもう寝るね」
と声をかけて、リビングを出ていってしまった。
リビングに取り残された私と芦屋先生はしばしの沈黙のあと、顔を見合せてどちらともなく苦笑いを浮かべた。
さっき澪が言っていた、あまっている部屋というのはリビングのすぐ隣にある和室だった。
布団が丁寧に2組並べて敷いてある。
「わ、私、先に寝てますね!おやすみなさい」
私はそれだけ言うと、先生の顔も見ずに和室に駆け込んで扉を閉めた。