こころ、ふわり
私がずっと見てみたかった「散歩、日傘をさす女 」という絵もちゃんと展示してあって、いざ目の前でそれを見れて感動した。
「この絵を見ると思い出すな」
と芦屋先生がつぶやく。
「俺と萩が同じ絵を描いてたこと」
「そうですね」
私も同じことを思い出していた。
たくさんある画集の中から、同じ人の同じ絵を選んで描くなんてやっぱりそうそうないことなのだ。
あの時は先生に避けられていると思っていたから、この絵をきっかけに元通りになった気がして特別なものに思えた。
「先生が描いてた絵も、すごく綺麗だったなぁ」
下絵も描かずにスラスラ描いていた、魔法のような先生の手。
先生からしてみれば当たり前のことかもしれないけれど、私にとってはすごいことだと毎回思う。