こころ、ふわり


モネの展覧会をずっと楽しみにしていたから、こんなに早く出ることになるとは思っていなくてとても残念だった。


でも、私も先生も口にはしなかったけれど、後輩と会ってしまったこと、そしてその後輩に私たちの姿を確認されたことがどんなに危険なことなのか、よく分かっていた。


帰りがけに、売店で先生がポストカードのセットを買ってくれた。


10枚ほどポストカードがセットになっていて、すべてモネの絵が描かれていた。


「部屋に飾ります。ありがとうございます」


私がそう言うと、先生が笑うのが見えた。









あまりにも予定より早く美術館を出た私たちは、しばし外で立ち止まった。


「これからどうする?お腹空いたでしょ」


お昼時を過ぎた時間。


芦屋先生にそう言われた途端、また私のお腹の虫が鳴りそうな気がして慌てて手でお腹を押さえた。


「お腹は空きましたけど……でも、どこで食べますか?」


なんだか、外食するのも怖くなってきてしまった。


今日は日曜日だし、市内であればどこに行っても学校関係者がいそうだ。


ここに来るまでは変装しているから大丈夫と思っていたけれど、食事はどうしてもマスクを取らなくてはいけない。


それを考えると簡単にご飯も食べられないのだ。


こんな時、いつも澪と徳山先生はどうしているのだろうか。


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