こころ、ふわり


部屋着に近い服装で出てきてしまったけれど、そんなのはどうでも良かった。


ただ、澪に会いたかった。
話をしたかった。


電車に乗って、目的の駅を目指す。


急いでいるからか、やけに電車の走るスピードが遅く感じてイライラしてしまうほどだった。


澪がいるというカフェに到着した私は、広い店内で彼女の姿を探す。


綺麗なツヤのあるロングヘアを見た瞬間、すぐに澪だと分かった。


彼女の後ろ姿はとても美しい。
それだけで澪だと分かるほどに。


「澪!」


声をかけると、彼女が振り向く。


久しぶりに見る澪は、私を笑顔で迎えてくれた。


「萩、来てくれてありがとう。嬉しい」


「澪……」


会ったばかりだというのに、私は早速泣いてしまった。


泣くつもりなんて無かったのに。
澪が笑っているから。


その笑顔が本当の彼女の笑顔じゃなかったから。


余計に悲しくなった。

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