こころ、ふわり
若菜は私がこんなに大きなリアクションをすると思っていなかったらしく、あははと笑っていた。
気が気じゃない私を気づかって、澪が代わりに若菜に尋ねる。
「気があるって?何か見たの?」
「映画とか、食事に誘ってるの何回か見たの。玉木先生って大人しそうに見えて、けっこう積極的なんだなーって思ったから忘れられなくて」
映画や食事……。
気分がどんどん落ちていくのが自分でもよく分かった。
玉木先生は取り立てて特別美人とかいうわけではないけれど、綺麗な顔立ちをしているし、何より清楚という言葉がピッタリな純朴な雰囲気を身にまとっている。
そんな人に何回も誘われて、芦屋先生だって悪い気はしないはずだ。
「芦屋先生はその誘いに乗ってるの?」
澪は私の聞きたいことを代弁してくれて、若菜にグイグイ質問する。
「ほとんど断ってるとは思うけど……。でも1回くらいは食事に行ってるかもね。彼女いないし、こんなチャンスまたとないでしょ」
「そうなんだ」
なんだか気まずそうに澪が私の顔色をうかがってくる。
なるべくその場では笑うようにつとめた。
「ちょっとトイレ行ってくる」
くるっと2人に背を向けた私は、足早にトイレに駆け込んだ。