こころ、ふわり
定期試験を納得のいく結果で終わらせた私は、ついに大会の日を迎えた。
もしこの地区大会で優勝出来なければ、私たち3年生は引退になる。
高校最後の大会ともなれば、私の両親も応援に駆けつけてくれた。
試合用の綺麗な袴に袖を通した私は、応援席を見上げた。
菊ちゃんの両親と共に、私の両親が手を振っているのが見えた。
「あれ見て、萩用の応援グッズ」
隣で菊ちゃんが呆れたようにため息をつく。
菊ちゃんの両親が「菊」と「江」の二文字の派手なうちわを持っていて、私の両親は「は」と「ぎ」のうちわを持っていた。
私の両親はうちわなんて用意していなかったはず。
そういえば、前に菊ちゃんのお母さんがアイドルのコンサートに行くような菊ちゃん専用のうちわを作っていたのを思い出した。
「萩のうちわ、うちのお母さんが勝手に手作りしてたの……。ごめんね、迷惑でしょ」
心底申し訳なさそうに菊ちゃんが私に手を合わせる。
「全然迷惑じゃないよ。嬉しい!」
だって、私の両親もまんざらじゃない顔でうちわをブンブン振っているから、なんだか面白くなってしまった。