こころ、ふわり
「おい、そろそろ時間だ。整列しろ」
と顧問の先生に声をかけられて、私と菊ちゃんは指示に従う。
チラッと視線を応援席に戻した時、席の後ろに芦屋先生が立っていたような気がして目を疑った。
漫画じゃないけれど、大袈裟に自分の両目をゴシゴシとこすってから、もう一度応援席に目を向ける。
芦屋先生の姿はどこにもいなくて、さっき一瞬先生がいたように見えたところには全然違う男の人が立っていた。
やだな、私……。
ついに幻まで見えるようになっちゃったのかな。
自分で自分を笑いたくなる。
そうこうしているうちに、応援席には澪と若菜と、なんと徳山先生までやって来たのが見えた。
澪と若菜が私の応援に来てくれるとは言っていたけれど、まさか徳山先生が来るなんて思ってもみなかったから驚いてしまった。
「萩。行こう」
菊ちゃんに背中を叩かれて、私は視線を前に戻すとうなずいた。