こころ、ふわり
試合がすべて終わり、私は応援席へ向かった。
団体戦は、あのあと5番手の同級生も4射すべてを的に命中させたものの、対戦相手はほほんどミスが無かったため負けてしまった。
負けて泣いているのは後輩たちで、私たち3年生は泣くことは無かった。
負けて悔しいというより、充実感の方が強かった。
個人戦では菊ちゃんが優勝し、彼女だけはまだ弓道を続けることになった。
「萩、お疲れ様」
お母さんが私の頭をポンポンと撫でてくれて、隣にいたお父さんも嬉しそうに笑っていた。
「夏休みは温泉でも行こうか。今まで部活で旅行も行けなかったから」
「うん!」
うなずいた私の後ろを、お母さんが指さす。
「応援に来てくれたお友達にも、ちゃんと挨拶しなさいよ」
私が振り向くと、澪と若菜と徳山先生が拍手を送ってくれていた。
「萩〜!かっこよかったよ!」
若菜がとびきりの笑顔でうちわを振っている。
たぶん、うちの両親が私の応援用のうちわを彼女に渡したのだろう。
「お疲れ様、吉澤さん」
徳山先生にそう言われて、私は急いで頭を下げた。
「徳山先生にまで来てもらえるなんて思ってませんでした!ありがとうございました」
「君に怒られるかとも思ったけど、実は芦屋先生に連絡してここに来てもらってたんだよ」
徳山先生の口から芦屋先生の名前が出てきたので、ドキッと胸が騒ぎ出してしまった。