こころ、ふわり
ギュッと目を閉じて、心を落ち着かせた私はゆっくり開けた目で遠くの的を見つめた。
周りの音が消えて、集中力が高まっていく。
弓を握る手に力が入る。
肩の力は抜いて、指先の感覚を信じて。
矢が、放たれた。
トン!
と、小気味いい音を立てて的に当たる。
残りの3射も、すべて命中した。
喜びたいところだけれど、こういう場で喜びを表現するのは禁じられているので我慢し、5番手の同級生に
「あとは任せたよ」
と声をかけた。
うなずいたのを見届けてから、私はまた応援席に目を向けた。
徳山先生の隣に、もう芦屋先生の姿は無かった。