Faylay~しあわせの魔法
「ヴァン……。この先には俺だけで行ってくる。ここで待っててくれ」

「えっ?」

「どうやら、思ったよりもかなり危険な相手だ。だから……」

そこに、リディルの声が聞こえてくる。

『フェイ、ヴァンを戻して。代わりに私が行く』

「リディルもそこで待機。来ちゃ駄目。……これは、危険だ」

『危険だから行くんだよ』

「そうですよ!」

ヴァンガードが話に割って入る。

「僕は戻りません。危険な敵と分かったのなら尚更、フェイレイさん1人で行かせるわけにはいきませんよ」

「けど、ヴァンはまだ候補生で……」

「そんなこと、戦闘になったら関係ありませんよ。とにかくこのまま進みます。僕は、戻るわけにはいかないんだ……!」

握り締めた拳は、フェイレイのように怒りの為に震えているわけではなかった。

それは恐怖心からきているものだと、ヴァンガードは理解していたけれども、ここで引き返すわけにはいかなかったのだ。

ちゃんと、『実績』を残すまでは。

カチカチと歯を鳴らしながらも早足で歩き出したヴァンガードを、フェイレイは慌てて追う。

「駄目だヴァン、お前に何かあったら、お前のご両親に申し訳が立たない」

「大丈夫ですよ!」

ヴァンガードは怒鳴った。

「あの人達は僕が無事に帰るより、勇敢に戦って死んだ方が嬉しいでしょうからね!」

「……何だって?」
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