Faylay~しあわせの魔法
「大丈夫だ! お前になら出来る!」

「なんで……」

ヴァンガードは魔銃を構えた。

「なんで、そこまで信用するんだ」

暴れるドラゴンは、なかなか正面を向いてくれない。フェイレイが顔に張り付いて、なんとか正面を向かせようと奮闘している。

「外れれば、貴方が死ぬんだ」

剣を刺されたまま、ドラゴンは口を閉じようとしている。その牙にフェイレイは腕を貫かれ、血が大量に噴き出していた。

「外したら……」

全滅するのだ。

「……僕は」

グッと歯を食いしばる。

「うわあああああ!!」

一瞬だけ、ドラゴンは正面を向いた。そこを逃さず、ガチン、とトリガーを引き絞り、『氷弾』を発射した。

「当たれええええええ!!」

渾身の一撃は、見事ドラゴンの口内に飛び込んだ。

ドン、と弾が破裂して、一瞬のうちに口内から食道までを凍らせる。ドラゴンは咆哮を上げながらドスンと後ろに倒れた。

その衝撃で口を開いた瞬間に、フェイレイは剣を抜いてドラゴンから飛び退った。

少し距離を置くと、そこに崩れるように膝をつく。

「って~、さすがに、キツかったか」

しかし、ヴァンガードの放った氷弾の影響で腕は丸ごと凍り、マグマのように熱いドラゴンの口内で火傷をし、更に牙に貫かれた傷口は痛みを薄れさせていた。

麻痺しているだけだが、今は好都合だ。
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