Faylay~しあわせの魔法
そこへ、緑色の優しい光に包まれた女王がやってくる。

森の精霊、フォレイスの女王。

彼女は長い緑色のドレスを風に靡かせながら、フェイレイを後ろから柔らかく包み込んだ。

すると甲板の下から巨大な大木が次々に飛び出し、彼の周りを球状に包み込み始めた。それを内側から見上げるフェイレイは、悲痛な声を上げる。

「リディル……!」

4人目の女王召喚。

「駄目だ、やめろ!」

自分を包み込む緑色の女王に向かって叫ぶ。

《まずは貴方が傷を癒しなさい。マスターはそれを望んでいる》

ぽう、と光る女王の力は、優しいぬくもりでもってフェイレイの傷を癒していく。



甲板の上に出来た小さな森を眺め、一瞬呆気に取られていたアレクセイに、更に声が響いた。

『リディアーナ……』

不敵に笑う、カインの顔が見えるようだった。

『行け、アレクセイ』

その声にアレクセイは従った。

それが最善の策だと判断し、魔王の力の媒体として身体を明け渡した。



「リディルさん、やめてください!」

今度こそ倒れそうになるのを、ヴァンガードが必死に支える。

周りを警護をしてくれている騎士や、付き添っている侍女たちも手を伸ばし、リディルを何とか止めようとする。

「早く殿下を寝台へ!」

そう言ってリディルの腕を取る侍女たちの手を、リディルはやんわりと止めた。

「まだ、駄目……!」

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