Faylay~しあわせの魔法
フェイレイの傷を完治させ、なおかつ、折れた剣の代わりにスティルの女王を彼に託さなければならなかった。
リディルも大切な人を護りたかった。
その想いで、必死に戦う。
そんな彼女の前に、それは現れた。
黒い影を纏った黒衣の騎士が、どこからともなくふうっと現れ、雨打つバルコニーに下り立った。
ざわり、と肌が粟立つ。
姿形はローズマリーの幼馴染であるあの騎士のものであるが、そこから醸し出される“気”は、彼ではなかった。
彼は──あの手だ。
暗い夢の中でリディルを探し、彷徨っていたあの白くて大きな手だ。
「何者だ!」
突然現れた不審者に、騎士たちは剣を向ける。
「駄目……!」
リディルが手を伸ばすも間に合わず、騎士たちはあっという間に、見えない力によって吹き飛ばされた。
侍女たちの悲鳴が上がる。それを振り返って、リディルは叫ぶ。
「逃げて!」
しかしその声も空しく、周りにいる人間すべてが、黒衣の騎士から溢れ出る見えない力に吹き飛ばされ、壁に、柱に強かに身体を打ち付け、意識を失った。
かろうじてヴァンガードだけは、背中に激痛を走らせながらも起き上がる。
黒衣の騎士は、妖しい笑みを浮かべながらリディルにジリジリと近づいていた。
リディルも大切な人を護りたかった。
その想いで、必死に戦う。
そんな彼女の前に、それは現れた。
黒い影を纏った黒衣の騎士が、どこからともなくふうっと現れ、雨打つバルコニーに下り立った。
ざわり、と肌が粟立つ。
姿形はローズマリーの幼馴染であるあの騎士のものであるが、そこから醸し出される“気”は、彼ではなかった。
彼は──あの手だ。
暗い夢の中でリディルを探し、彷徨っていたあの白くて大きな手だ。
「何者だ!」
突然現れた不審者に、騎士たちは剣を向ける。
「駄目……!」
リディルが手を伸ばすも間に合わず、騎士たちはあっという間に、見えない力によって吹き飛ばされた。
侍女たちの悲鳴が上がる。それを振り返って、リディルは叫ぶ。
「逃げて!」
しかしその声も空しく、周りにいる人間すべてが、黒衣の騎士から溢れ出る見えない力に吹き飛ばされ、壁に、柱に強かに身体を打ち付け、意識を失った。
かろうじてヴァンガードだけは、背中に激痛を走らせながらも起き上がる。
黒衣の騎士は、妖しい笑みを浮かべながらリディルにジリジリと近づいていた。