コントラスト
プロローグ
東京某ビルの地下四階。太陽から完全に隔離されたこの部屋で、取引は行われていた。



「今月は殺人事件が二件、強盗が三件、詐欺と放火が一件ずつだ。詳細はこれにまとめてある。」



「いやぁ、いつもすまないね。」



水色のファイルを受け取ると、村井直幸は小さく頭を下げた。



その体はがっしりとしていて、糊のきいたシャツと真新しいズボンがよく映えている。


彼はまだ若いが警視庁に勤める一端の刑事だ。


「警察としても、君の助力には本当に助かるよ。」



「それなりの報酬は貰ってるしな。」


向かいのソファに座っている男は事もなげにそう流した。



村井も若いが、相手の男はさらに若い。


十代といっても過言ではないだろう。



しかし村井とは対照的に、彼の着こなしは品がいいとはとても言えなかった。



スーツの腕はシャツごとまくられて七分袖になっているし、胸襟もかなり緩い。




「まあ、そうなんだけどね……。」




村井は苦笑いをするとファイルを自分の鞄にしまった。
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