白衣を脱いでキス。
あたしだけがわたわたして。
先生は平然としている。
マスクの下はわからないけど。
「理子ちゃん、これが歯を削る機械」
わたわたし続けるあたしの手に、握らせた機械。
「この部分を回転させて虫歯になってしまった部分を削るんだ」
あたしが握る機械の先端を指さして、先生は丁寧に説明してくれた。
…あたしのさっきの質問はもしかしなくても完全になかったことにされてる?
「先生、教えてくれて嬉しいですけど、名前で呼んだ理由に答えてくれてないですよ?」
気になるとなにがなんでも知りたくなる性分のあたし。
先生が名前で呼んだってことが気になった頭の中はそのことでいっぱいになってしまう。
別に先生がどうのこうのってことじゃない。
例えば、勉強だったり、何気ない日常のことでも気になったらあたしはそのことでいっぱいになってしまう。
「気になるの?」
なんでこんな試すような言い方をするのだろう。
「…なります」
ちょっとムッとしながら答えると先生が声を上げて笑った。
「はは、理子ちゃん素直すぎ」
先生はイスから立ち上がって、ゴム手袋を外してゴミ箱に捨てると元のイスに座った。
そして、あたしのセミロングのダークブラウンの髪の毛を撫でた。