白衣を脱いでキス。



髪を撫でられた経験だってない。

小さい頃、お父さんや親戚の人に撫でられたりしたくらい。

最近はなぜか友達もよくあたしの頭を撫でてくるけど…。


「~っ先生」


目を細めた先生は今、微笑んでいるの?

マスクの下の表情が知りたい。


「…マスク」


「ん?」


撫でていた手の指先にあたしの髪が巻きつく。


「…マスクも、外してください」


先生は一瞬だけ目を見開いたあと、すぐに何もなかったように目を細めた。


「それはダメ」


先生の瞳にあたしが映っている。


「なんで、ですか…?」


髪から先生の手の温もりが離れた。

それを寂しいと思うあたしは出会ってたった2日なのに先生に惹かれてる。

そう、とてつもなく。


「理子ちゃんは患者だから」


グサッと鋭い何かに胸を貫かれたように苦しくなった。



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