白衣を脱いでキス。



裏口にはスタッフ用の駐車場があって、1台だけ黒のステーションワゴンが止まっていた。

あれが先生の車かぁ。

そんなことをぼんやり考えていると、裏口のドアが開いた。


「待たせてごめんね」


申し訳なさそうに言う先生。

むしろ謝らなきゃいけないのはこれから図々しくも送ってもらうあたしなのに。


「ぜ、全然大丈夫ですっ」


「よかった」


にっこり微笑んだ先生は白衣を着ているときよりも確実に若く見える。

っていうか実年齢がまったく想像もつかない。


「乗って」


車の鍵を開けた先生に言われてふと考えてしまう。

ここは、助手席に乗るべき?

それとも後部座席?

先生に彼女がいるなら助手席はまずいよね。

でも後部座席に乗るのも意識してますって言ってるようなもんな気もする。


「築山さん?」


うーん。

どっちがいいか悩んでいると、先に運転席に乗っていた先生が助手席の窓を開けた。


「そんな難しい顔しなくても、普通に助手席に乗ってくれて構わないのに」


なんだか真剣に悩んでバカみたいだったかな。

でも…助手席に乗っていいんだ。

そんな、先生がなんでもなく言った言葉でも、嬉しくなった。



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