アンガー・グラッチ・ヘイトレッド
すると頭上の黒球から黒い手が伸び2人に襲いかかった。2人は防御せず、走らず、叫び声も上げずただ手にしている物で攻撃した。2人の目の前に大きな黒い手がどすんと音を立てて落ち、ばたばたと暴れてから黒い煙りになって消滅した。
「大事に使って欲しいなら余計な仕事増やさないでよね!」
詩織は闇雲を見ずに言った。前のような敵意は口調には無い。視線はまだ頭上のクロちゃんをとらえて離さない。
闇雲はバットを握り直し余裕たっぷりに言った。
「攻略開始といきますか!」
2人は恐れなど微塵も感じさせない力強い跳躍で一気に黒球に接近し挑みかかった。



時同じくして黒球を目指して息を切らして走る修一がいた。到着するまであと10分はかかる。
胸には固い決意が、手には木刀が握られている。
「もう…あんな事は言わせない…!」と、何度も頭の中で繰り返す。

話は少し前に遡る。


街の方へ遠ざかるクロちゃんを見た詩織ちゃんは、
「人が多い所に移動する気だわ!早く追いかけるわよ!」
と俺達を促した。だけど、この言葉の先にいたのは俺達では無く闇雲だけだった。
「俺はバイクだから一足先に行かせて貰うぜ!2人仲良く後から来いよ。
つってもまぁ…お前等が追い付いた頃には俺が叩きのめした後だからよ!」
そう闇雲はへらへらとしかし強気な感じで言った。そんな闇雲を詩織ちゃんが睨みながら言う、
「何いってんのよ!アタシとアンタが行くのよ!」
それから俺に向かって、
「修一は残って。これ以上は危ないし…足手まといになるから。」
と、迷いのない目で言った。
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