アンガー・グラッチ・ヘイトレッド
倒れている堂本に詩織は近づきトドメを指すべく竹刀を振り上げた。それを見た滝本が声をあげる。
「ちょっと待って!」
詩織は竹刀を振り上げたまま静止した。
「詩織ちゃん待ってよ!そいつ俺の親友なんだ。」
「だから?」
「だからって…。」
「残念だけどここまでいったらもう元には戻れないのよ。」
詩織はきっぱりとした口調で言う放った。
「そんな…。でもっ…!」
「このままほおって置いたらまた暴れ出すわっ!!もう人間じゃ無いの。化け物なのよ!」
「…。」
その時、堂本が起き上がり、滝本に向かって歩き出した。その動きはよたよたとしていてもう反撃する力が無いように見える。
「こいつまだ動くの!?」詩織は竹刀を構える。
「大丈夫だよ。俺の事が分かるんだ。そうだろ?」
堂本は頷く様に滝本に近づき目の前まで迫ると、ぐぉっと一声だけ吠えた。
「堂本…?お前体が消えかかってる…!」
堂本は最後の力を振り絞る様に唸りそれからゆっくりと滝本に向かって倒れた。しかし、ぶつかる前に黒い砂になって崩れた。滝本は両手で砂を掴もうとしたが突然吹いた風に邪魔をされて跡形も無く消えてしまった。
「堂本……。」
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