DesTroMentaL ParaSity
―デストロメンタル パラシティ―
――それは8年前の事――
春の穏やかな風が晴天を
吹き抜ける中、蜜色の髪
を持つあどけない少女は
満面の笑みで揺らめく影
に大きく手を振った。
「パパ~お帰りなさい」
すると、木々の間から姿
を表した紳士は柔らかく
微笑みながら彼女を高く
抱き上げた。
「ああ、ただいま。今日
も良い子にしてたか?」
「もちろん♪あっ、そう
そうさっきママと野原に
行ったら、バラがすごく
綺麗に咲いてたのよっ!!
いっぱい摘んできたから
後でパパにもあげるわ」
「――ははっ、有難う。
楽しみにしているよ」
そうして、彼らが暫し和
やかな会話を続けている
と屋敷の方から透き通っ
た声が聞こえてきた。
「あなた達、今お茶が入
ったから来て頂戴~」
「はぁい!!パパ、あっち
に行きましょう?ママの
入れた紅茶は本当におい
しいんだからっ!!」
そう言って少女が懸命に
急かすと、紳士はたじろ
ぎつつも素直に従った。