小春日和

固まったままのアタシに野田くんはもう一度言った。

「俺さ、小春先輩のこと好きなんだよね~だからさっ協力してくれるでしょ?」

そう言って携帯電話をヒラヒラと揺らす野田くんにアタシは頷くしかなかった。


野田くんは小春ちゃんのことが好きだったんだ。

「じゃあ、よろしくね日和ちゃん」

そう言い残すと野田くんは帰って行った。


ショックだったけど、どうしてだろうあんまり悲しくない。
驚きすぎて感情が鈍ってるのかな…。
アタシは野田くんが好きじゃなかったの?

アタシは小春ちゃんのいる保健室に戻った。

小春ちゃんはまだベッドで眠っていた。
アタシはまた傍に置いてあるイスに座って小春ちゃんが目を覚ますのを待つことにした。



太陽が沈み始めたので小春ちゃんを起こすことにした。
ゆっくり肩を揺さぶってみると案外すぐに起きてくれた。

「…日和?」

「お母さんが迎えにきてくれるって。一緒に帰ろう?」

小春ちゃんは体を起こすとアタシの方を向いた。
まっすぐにアタシを見つめる小春ちゃんの視線に耐えられなくてアタシは俯いた。


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