小春日和



朝、玄関の扉を開くとちょうど小春ちゃんも家を出たところだった。

「おはよう」
「おはよっ」

久しぶりの朝の挨拶。
ただの挨拶なのになんだかそれだけで嬉しくなる。

ふたりで並んで歩くのも。
笑顔で話すのも。
今まで当たり前だと思っていたことが今は幸せに思えてくる。

もうこの幸せを手放したくない。


「小春先輩っ」

後ろから聞こえた小春ちゃんを呼ぶ声にアタシの背筋が凍った。

「野田くん、おはよう」

「おはようございます小春先輩、日和ちゃん」

「…おはよう野田くん、ごめん…アタシちょっと先行くね」

アタシはそう言って走って教室に向かった。



アタシが教室に入ってしばらくしてから野田くんが入ってきた。
そして自分の席にカバンを置いてアタシの前の席に座った。

「さっきはありがとう。おかげでたくさん話せたよ」

「…そう、よかったね」

カバンから教科書を取り出して机に入れながら答える。

「これからも期待してるよ。日和ちゃん」

楽しそうにそう言って彼は自分の席に戻って行った。

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