ACcess -縁-
「ただいまー。」

玄関から上機嫌な母さんの声が聞こえた。
きっとお土産か何かを買ってきてる。

歩はその声を聞き、下に降りて行こうとした。
「…待て。」
俺は呼び止める。
「本当に…さっき帰ってきたのか?」

歩は少し俺を見た。
「嘘、ついてどうすんだよ。
 オレだって、状況が分かんないんだよ。
 ほら、これ。」
本来の大きさの四分の一ぐらいの板チョコを渡してきた。
「疲れてる時は甘い物、らしいぜ。」
そうキザに言うと、階段を降りていった。

すまんが、甘い物は苦手でな。
もうお前の部屋から、ひとかけら奪って食べたばかりなんだ。

俺はそれを食べずに足元へ置いた。

水を飲んで、俺も下へ行く事にした。

だってもう何も考えられないし、考えたって答えが出てきそうになかった。

きっと、今日は体調が悪かったんだ。

そういう事にしよう。

そういう事にしないと。


母さんがお土産のファーストフード店の、少し冷めたバーガーとポテトを渡してきた。
それでも美味しかった。

父さんはコンビニで買ったアイスを。
こっちはちょっと溶けてた。
でも食べたら、食道を通り胃まで通過している感触が分かった。

こうしてると思う。
夢、だったのかな?
夢、だったんだよな?
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