ACcess -縁-
走っていた。

古城のダンジョン。

ただ、走っていた。

何かから逃れるように、後ろを気にしながら廊下を疾走していた。

震える拳を握り締め、息をするのさえ忘れてたいた。


何度も角を曲がり、長い絨毯の敷かれた廊下を走る。

部屋に入るのは恐かった。

だから走る。

そして、何度目かの角を曲がる。


!――


グラリ。


あぁ…。

なんだ?


女の子?


「…っ!」

びっくりして起き上がる。

すごい汗と、息切れで放心状態だった。

運動をした後の様な、体に掛かる重たい圧力と気怠さ。
何かを考えたいけど、考えられない。

「…泉?」
部屋の扉が開き、歩が顔を覗かせる。
「起きたのか?」
「…?何だ?」
「さっき見たときは、うなされてたから。」
「…起こせよ。」
「何度も揺すって、名前呼んだけど起きなかった。」
「…。」
「声が、聞こえなくなったから様子見に。」
「そうか…。ごめん。」
「いや、別に。
 大丈夫なら、いいんだ。」
「…多分、大丈夫。」
「何かあったら呼んで。
 まだ起きてるつもりだから。」
「…うん。」

歩は戸を閉めて自分の部屋へと戻っていった。
不思議な感覚。

夢だとまったく思わなかった。

歩の声にも反応しないほど睡眠していたからなのか?

寝ていてこんなに体力を消耗したのは初めてかもしれない。

そんな事を思いながら手の平を開けたり、閉じたりとそれだけを繰り返した。


また寝る気にもなれない。

恐い、のか?

分かんない。

本当に眠れないんだ。

今日、なんかおかしいな。

おかしいな、俺。
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