ACcess -縁-
コンコン――

「…はい?」
「入って、いいか?」
「…あぁ。」

寝付けない。

ということで、隣人の部屋へやってきた。

PCはネットを開いたままの画面になっていて、本人は椅子に座って本を読んでいた。
「なんか用か?」
「…いや、眠れなくて。」

そういって俺は、ヤツのベッドに潜り込んだ。
「眠れないんじゃないのか?」
「居場所の問題だ。」
「…あっそ。」

そのままの姿勢で本にまた目を落とし、俺の存在を無視した。

まぁ、その方が良いが。

同じような部屋だから特に落ち着かない、なんて事は無かった。
自分の部屋と同じような居心地と、もう一人誰かが居ると言う事で安心していた。

目を閉じる。

布団を肩まで掛けて、深呼吸をする。

不安な気持ちは少しは解消され、落ち着いてきた。


俺は部屋の主に聞いてみた。
「なぁ、お前も夢を見るのか?」
「…あぁ?
 夢、ぐらいみるだろ?普通。」
「お前は普通じゃないから。」
「なんだそれ。」
「…どんな夢だ?」

なんとなく、相方に聞いてみる。
同じような、臨場感のあるような夢は見た事があるのか?
「空、飛んだりとかじゃないか?
 ってか、夢なんてすぐ忘れちゃうだろ?お前は覚えてんのか?」


少し考える。

そうか、夢はすぐ忘れてしまう。
覚えていようとしても目を覚ました直後は鮮明だが、だんだんと時間が経つに連れて記憶は薄れてくる。

じゃあ、あの鮮明な夢は、夢じゃないのか?
「覚えている夢はどんなだ?」
「いつも以上に難しい質問だな。
 一部とか、断片的になら。全部覚えてるのなんて無いかな。」
「じゃあ、鮮明な夢は?」
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