ACcess -縁-
MDプレイヤーを止め、今愛用しているmp3プレイヤーを取り出した。
「会えなくてもー心配なんてなーいのーよー。」
「会えなくても私達はさぁ、マイペース。」
「変わらないのよねー」
「ほら放課後時代よ。」

少し前に引退した女性シンガーの曲。
何気なくランダムで流れたのがこの曲だった。

心の奥に響くような、染み込んでいくような…。

隣に人が居る安心感と、人間の体温、落ち着いた曲調。
何よりも狭いスペースだが、贅沢に布団をかけている心地よさがまた眠気を誘ってきた。

歩もそうなのか、ウトウトとしている。


「…泉。」
「なんだ?」
「気にすんな。」
「…してない。」
「お前はお前だ。」
「分かってる。」

何があったのか、お前はお見通しなんだろう。

助けてくれ、とは言わない。
せめて隣に居てくれないか、今だけは。
「…歩。」
「なんだ?」
「寄って、いいか?」
「…あぁ。」

おでこをあいつのおでこにくっつけた。
まるで熱を測るように。

「昔も…こうして寝たな。」
「そう、だな。」

不意に背中に腕が回ってきた。

「…こわ、かった。」
少しずつ腕に力が入る。
「泉が…また、こっちに帰って来なくなるのかと思った。」

声が籠もって聞き取りづらい。

「俺が…消えるなんてこと、無いから。」
「…そんなこと、分からない。」
< 34 / 52 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop