死霊むせび泣く声
 そして恐怖のあまり、フリップをパタンと閉じた。


「誰から?」


「いや。何でもない」


 俺はあえて里夏にこの死霊メールのことを隠し、グラスに残っていたカクテルを飲み干して、


「もう一杯もらえる?」


 とバーテンダーに訊いてみた。


「かしこまりました」


 バーテンダーはグラスを別に用意し、シェイカーの中にアルコール類と甘味料などを入れて、上下に振り攪拌(かくはん)する。


 ゆっくりと、しかしいかにもその道のプロらしく、客に酒を出すのに躊躇っている感じがない。


 俺はアルコールが届くのをじっと待ち続けながら、さっきのおぞましいメールのことを思い出し、頭の中に焼きついた映像が離れないでいた。


 だが、次の瞬間、パッと発想を切り替えて、
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